どうも。国内不動産関連業務に10年、海外不動産投資コンサルタントとして2年働いていたライターです。
転勤や相続など、不動産を売却するきっかけになる出来事は多いです。
しかし、多くの人にとっては、不動産は人生のうちにそう何度も売却するものではありません。
不動産の売却は初めての経験という人が大半でしょう。
この記事の目次
不動産業者の選び方や注意点を教えます
このため、何から始めればよいのか、失敗しないためにはどうすればよいのか知りたいと思う人もいるのではないでしょうか。
不動産売却に失敗しないためのコツは、以下のポイントに集約されます。
・仲介会社となる不動産業者をしっかり選ぶ
・適切な価格を設定する
・売却の期限を決めておく
・売却にかかる経費を把握しておく
この記事では、不動産業者の選び方や価格設定時の注意点、不動産売却にかかる経費などについて解説します。
まずは不動産売却の流れについて理解しよう
不動産を売却するためには、まず売却の流れについて把握しておきましょう。
スケジュールが曖昧なままで売却活動を始めると、売却期間が長引いて値下げせざるを得ないなどのことになってしまいます。
1. 周辺相場価格の調査
2. 不動産業者の選定
3. 不動産業者と媒介契約を締結
4. 売却活動を開始
5. 買い手と売買契約を締結
6. 決済・引渡し
不動産の売却に必要な期間は、一般的に最低2ヶ月から長くて6ヶ月です。
時間的な余裕を持たずに売却活動を始めると、早く売却するために値下げせざるを得なくなってしまうこともあるので、注意しましょう。
不動産価格相場の調べ方
不動産売却の最初のステップは周辺価格の調査です。
不動産業者との最初の接点は不動産の査定ですが、あらかじめ周辺相場を把握しておけば、査定結果が適切かどうかを見極められます。
不動産業者ではなくても、インターネットで不動産の価格相場を調べることが可能です。
価格相場を調べるのに利用できる代表的なサイトは3つあります。
国土交通省が運営する不動産取引価格情報検索
「不動産取引価格情報検索」は、国土交通省が運営しているサイトです。取引時期や取引地域で不動産を絞り込めます。
そのほか、マンションや一戸建てなどの物件種別でも絞り込みが可能です。
国土交通省が運営しているサイトではありますが、取引当事者に対するアンケートがリソースなので、参考として見ておくとよいでしょう。
不動産流通機構が運営するレインズ
レインズは、公益財団法人不動産流通機構が運営しているサイトです。
公益財団法人不動産流通機構は、国土交通大臣の認可を受けています。
レインズでは情報がマンションと戸建てに分かれており、都道府県と都道府県内の地域で検索できます。
不動産取引の成約価格が掲載されているので、正確な価格情報を収集するためには、このサイトを利用するのが有効です。
各種不動産ポータルサイト
最も手軽にアクセスできるのが、各不動産業者が運営している不動産のポータルサイトです。
現在不動産市場に出ている不動産の売り出し価格を確認できます。
駅や駅からの距離などによって絞り込みできるなど、具体的な条件で絞り込みできるので、情報検索に慣れていない人でも使いやすいでしょう。
ただし、確認できるのは売り出し価格なので、実際の取引価格と異なることに注意が必要です。
不動産業者を絞り込んでから相談する
不動産を売り出すには、不動産業者に仲介を依頼するのが一般的です。
しかし、不動産業者は無数にあるので、どのようにして不動産業者を選べばよいのかわからないという人も多いでしょう。
最初から多くの業者に相談すると対応が大変になるので、あらかじめ業者を絞り込んでから相談するのが賢明です。
ここからは、不動産業者の絞り込みかたについて解説します。
一括査定サイトを利用する
最も手軽な方法は、不動産の一括査定サイトを利用することです。
一括査定サイトでは、査定したい不動産の情報を入力すると同時に複数の不動産会社から査定を受けられます。
査定の申し込みをしたら、査定価格と営業マンの対応態度などを比較して不動産業者を絞り込むとよいでしょう。
強みのある業者を複数使う
なお、マンション販売や戸建販売など、不動産業者には得意不得意があります。
また、販売か賃貸かによっても得意分野が分かれるため、自分が売る不動産にあった不動産業者を見つけることが重要です。
査定結果の説明を聞くときには、同じタイプや同じエリアの販売実績を併せて確認するとよいでしょう。
査定額の根拠を確認することが重要
査定結果を受け取ったら、自分で調べた市場相場と比較してみましょう。
相場よりも極端に高い価格を提示してくる不動産業者は要注意です。
媒介契約の獲得を目的として査定時点で高い金額を提示しておき、後で売り出し価格を下げさせる不動産業者もいます。
不動産業者を見極めるため、必ず査定額の根拠を確認しましょう。
客観的なデータに基づいた納得性の高い説明をしてくれる業者を選ぶのが重要です。
不動産の査定について
インターネットで相場を確認できるのに、なぜ不動産業者によって査定額が違うのかと、疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。
不動産業者はレインズなども確認していますが、インターネットで探せる情報は参考情報として捉えています。
不動産業者は主に3通りの方法で査定をしており、どの方法を重視しているかは不動産業者によって異なります。
取引事例比較法
取引事例比較法は、査定対象の不動産と同じような不動産の取引事例を集めて査定価格を決める方法です。
例えば以下のような条件について似ている不動産の情報を集めます。
・立地している場所
・物件種別(マンションか一戸建てかなど)
・築年数
・間取り
・駅からの距離
レインズでも調べられる項目が多いので、不動産業者でなくても同じような方法で価格の検討をつけることはできるでしょう。
原価法
原価法による査定では「再調達価格」という数字を用います。
再調達価格とは、その建物を同じ条件で再度建築したらいくらかかるかという金額のことです。
再調達価格には、劣化によって下がっている設備関係の評価額なども絡んできます。
査定説明があいまいな業者に注意
そのほか、建物や設備の耐用年数など関係する数字が多いうえに計算方法も複雑です。
ただし、査定結果の説明を受けるときに、計算方法が複雑だからとあいまいな説明をする不動産業者には注意しましょう。
納得のいく説明をしてくれる不動産業者を選ぶのが重要です。
収益還元法
収益還元法は、どちらかというと投資用不動産を査定するときに用いられる査定方法です。
現在の賃料もしくは周辺の賃料相場を確認した後、賃料を表面利回りで割りもどして価格を決定します。
ちなみに、表面利回りについては、東京都内の賃貸用不動産で3%〜4%前後が一般的(2020年5月現在)です。
不動産売却にかかる経費を把握しておこう
不動産業者から査定結果を受け取ったら、査定結果にもとづいて売却価格を設定します。
売却価格を設定するときには、あらかじめ売却時に発生する経費についても把握しておきましょう。
経費を把握しておかないと、当初考えていたよりもお金が残らなかったという結果になってしまう可能性があります。
経費についても必ず不動産業者に確認しておきましょう。
ここからは、不動産の売却にかかる主な経費について解説します。
不動産譲渡税について
不動産を売却すると、売却益に対して不動産譲渡税が課税されます。
売却額から帳簿上の評価額を差し引いた金額が売却益です。
不動産の購入額から減価償却費を差し引いた後の金額が帳簿上の評価額となります。
なお、不動産譲渡税の税率は不動産の保有期間によって異なります。
不動産購入の翌年1月1日から数えて5年以内の場合は40%、6年以上経過している場合は20%が目安です。
仲介手数料は成約価格によって異なる
不動産業者を介して不動産を売却すると、仲介手数料がかかります。
仲介手数料は売却額によって異なるので、あらかじめ把握しておきましょう。
売却額 | 手数料率 |
200万円以下 | 売却額の5% |
201万円以上400万円以下 | 売却額の4% |
400万円以上 | 売却額の3% |
※参考:公益社団法人 全日本不動産協会
不動産売却でよくある失敗と対策
不動産価格を決定したら売却活動に入りますが、売却に失敗しないためのポイントを確認しておきましょう。
売却価格が希望より安かった
不動産売却に失敗する原因の大半は、価格設定が適切でなかったという点にあります。
最初の価格設定が高すぎると、売却期間が長期化することが多いです。
結果的に、とにかく売れることを最優先するため、希望よりも価格を下げざるを得ないということもあります。
1割程度上乗せした金額が適正価格
ほとんどの不動産は売買契約締結の前に値下げ交渉が入るため、値下げ交渉が入る前提で価格設定するのが一般的です。
値下げ交渉を加味すると、相場価格に1割程度上乗せした金額が適正価格となります。
よほどの根拠がない限り、上乗せしすぎにならないよう注意しましょう。
売却期間が長期化
売却期間が長期化すると「売れ残っているのは何か理由があるのではないか」と思われるようになり、買い手候補に敬遠されるようになってしまいます。
結果的に売り出し価格を下げざるを得ず、当初思っていたよりも利益が出なかったということも多いです。
価格以外に重要なポイントは、内覧の対応です。
特に水回りをきれいにしておく
不動産の買い手は、複数の不動産を比較するにあたって内覧による現地確認をすることがあります。
内覧のときに住居内が散らかっていたりすると、買い手の印象を下げてしまうでしょう。
特に水回りは印象に残りやすいです。
内覧予定が決まったら、必ず住居内を掃除しておきましょう。そのほか、内覧当日の朝は換気しておけば万全です。
税金などの経費を把握していなかった
無事売却が完了したとしても、あらかじめ必要経費を把握していなかったために、当初思っていたより利益が出なかったということもあります。
不動産譲渡税や仲介手数料のほかにかかる経費は以下の通りです。
・印紙税
・抵当権抹消登記費用(ローンが残っている場合)
・引越し費用(居住用として利用中の場合)
売却活動を開始する前に、必ず経費を把握しておきましょう。
ローンが残っていても売却できる?
住宅ローンが残っている状態で売却を検討することもあるでしょう。
しかし、ローンが残っていても売れるのだろうかと思う人もいるのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、ローンが残っていても不動産を売却することは可能です。ただし、注意点があります。
残債額の確認は必須
まず、売却活動を始める前にローンの残債を確認しておきましょう。
残債額は、金融機関から送られてくる返済明細書の残高を見れば確認できます。
明細書が手元になければ、金融機関に問い合わせて送ってもらいましょう。
売却額よりも残債が多く、追加返済が発生すると、金額によるものの資金計画が大きく左右されてしまうので、要注意です。
買い替えローンという選択肢も
ローンの残債がある不動産から別の不動産に買い換えるときは、買い替えローンを利用するという選択肢もあります。
ただし、買い替えローンにも査定があるので注意が必要です。
一般的な住宅ローンと同じく、申込者の収入・年齢などのほか健康状態も査定項目となります。
自分の状況をよく見極めて金融機関に相談することが重要です。
>>家を売るならどこがいい?ローンが残ってると売れない?マンション売却の失敗例も紹介
引渡しと引越しのスケジュールに注意
今住んでいる家を売却するのであれば、次の家に引っ越しする必要があります。
引越しの予定は早めに組みましょう。
引っ越しから引渡しまでの間に余裕のないスケジュールを組んでしまうと、一連の手続きがとても慌ただしくなってしまうからです。
>>家・マンションを売りたい人向け!売却の流れやタイミング、手数料、買い替えのコツまとめ
不動産売却の目的を絞ることが重要
不動産売却を成功させるために重要なことは、売却の期限や最低限の売却額をあらかじめ決めておくことです。
期限や売却額は、不動産を売却して何をするのかという目的によって異なります。
不動産を売却するときには、誰もが「高く売りたい」と思うものです。
しかし、漠然と高く売りたいと考えているだけだと、購入申し込みが入った時に「もっと高く売れるのではないか」と思ってしまうことがあります。
結果的に売却のタイミングを逃してしまうことにもなりかねません。
決断のタイミングを逃さないようにするため、あらかじめ売却の目的を明確にしておきましょう。
>>マンションの売却タイミングや査定での注意点、仲介手数料と税金、相場の調べ方まとめ
◯著者プロフィール
秦 創平(はた そうへい)
国内不動産関連業務に10年、海外不動産投資コンサルタントの業務に2年従事し、現在はフリーライター。
国内の不動産や海外不動産投資に関連する記事を多数執筆。