マンションをはじめて売却する人は、そもそもマンション売却の流れや注意点などを知らない人が大半でしょう。
しかし、マンションは高額な商品なので、知らないと損することもたくさんあります。
そこでこの記事では、マンション売却時に必ず知っておくべきことを6つに絞って解説していきます。
具体的には、マンション売却の流れ・諸費用・不動産会社選び・相場価格の調べ方・税金・売却タイミングの6つです。
>>家を売るならどこがいい?ローンが残ってると売れない?マンション売却の失敗例も紹介
この記事の目次
マンション販売の経験をもとにコツを伝授
また、筆者は過去に不動産会社で仲介営業の仕事をしていました。
そのため、実際に数多くのマンションを仲介してきた実績があります。(新築、中古の両方で)
そんな筆者の実体験を元にこの記事は執筆しているので、ぜひ参考にしてみてください。
1.マンション売却の流れ
マンション売却時に知っておくべきことの1つ目は、マンション売却の流れです。
マンション売却は以下のように査定~引き渡しまで5つのステップがあります。
・査定
・媒介契約
・売却活動
・申込み&契約
・引渡し
それぞれのステップについて、以下より詳しく解説していきます。
査定:売れる価格の目安がわかる
査定とは、売却しようとしているマンションが「どのくらいの価格で売れるのか?」の目安を算出してもらうことです。
一般的な査定の流れは、机上査定をした後に訪問査定という流れになります。
机上査定とは、実際に物件を見学する前に、周辺の成約事例などを基に算出する査定方法です。
一方、訪問査定は実際に物件を見学し、机上査定の金額を精査する査定方法です。
最近では、ネットで手軽に査定依頼できる「一括査定サイト」を活用することが多いでしょう。
媒介契約:正式に仲介を依頼
媒介契約とは、不動産会社へ正式に仲介を依頼する契約のことです。
査定の時点では不動産会社に仲介を依頼しているわけではありません。
そのため、媒介契約を締結することで正式に仲介を依頼します。
言い換えると、複数の不動産会社に査定依頼して、その結果によって媒介契約を結ぶ不動産会社を選定するということです。
媒介契約を締結したら、いよいよ本格的に売却活動がスタートします。
なお、不動産会社を選ぶポイントの詳細は後述します。
売却活動:営業マンに代行してもらう
売却活動は、具体的に以下を行います。
・チラシやネットなどの広告活動
・内見者との予約調整
・内見の案内
・検討者との価格交渉など
上記の売却活動は、基本的に不動産会社の営業担当が行います。
ただ、内見(物件見学)の日程調整や内見前の清掃など、売主が行うこともあるので注意しましょう。
実際に何をすれば良いかは、不動産会社の営業担当の指示に従えば問題ないです。
申込み&契約:これも営業マンに任せる
検討者との交渉によって、売却価格や引渡し時期が決まれば申込みを受けます。
申込みを受けた時点で、ほかの検討者への案内はストップになります。
そして、申込みから概ね1週間以内に売買契約を締結するという流れです。
申込み~契約までの一連の手続きも、基本的には不動産会社の営業担当が主導してくれます。
引渡し(必要な作業まとめ)
売買契約を結んだ後、概ね1~2か月以内に引渡しを行います。
引渡しとは、マンションの鍵を買主に渡して、所有権も売主から買主に移転させることです。
売主が引渡し前にやることは以下になります。
・銀行との手続き(住宅ローンの完済手続き)
・引越し準備
上記も営業担当の指示に従えば問題ないです。
【注意点】引渡し日までに新居へ引越しを!
ただ、引渡し日以降はマンション内に入れないので、引渡し日までに新居へ引越しをする…という点は認識しておいた方が良いです。
以上が、マンション売却時の基本的な流れになります。
まずは、上記の流れを頭に入れておきましょう。
2.マンション売却時にかかる諸費用
マンション売却時に知っておくべきことの2つ目は、マンション売却時にかかる諸費用についてです。
マンション売却時は以下の諸費用がかかります。
・仲介手数料
・登記関係費用
それぞれ詳しく解説しますが、正確な金額については不動産会社の営業担当者から提示されるので、その金額を確認しましょう。
仲介手数料は価格によって異なる
仲介手数料は、マンションの売却価格によって以下のように利率が決まっています。
売買価格 | 仲介手数料率 |
200万円未満 | 売買金額×5% |
200万円超~400万円以下 | 売買金額×4%+2万円 |
400万円超 | 売買金額×3%+6万円 |
注意点は、上記で算出した仲介手数料に消費税がかかる点と、仲介手数料の利率は「上限」であるという点です。
消費税がかかる
たとえば、マンションが4,180万円で売却できたとしましょう。その場合の仲介手数料は、消費税込みで以下になります。
仲介手数料:1,445,400円=(4,180万円×3%+6万円)+消費税10%
このように、仲介手数料は高額になるケースがあるため、消費税10%が加算される点には注意が必要です。
仲介手数料の上限
また、前項の利率は不動産会社が売主・買主に請求して良い上限です。
つまり、前項で紹介した4,180万円のマンション売却であれば、不動産会社は売主・買主にそれぞれ1,445,400円を請求して良いです。
言い換えると、1,445,400円「以下」であれば、仲介手数料はいくらに設定しても良いといえます。
仲介手数料は媒介契約を締結するときに決めます。
ただ、基本は上記の利率(上限)で請求する不動産会社が多いと認識しておきましょう。
登記関係費用
登記関係費用とは、抵当権抹消登記の費用です。
そもそも抵当権とは、住宅ローンを組むときに金融機関が設定する「担保」のようなものです。
担保設定したまま第三者にマンションを売却できないので、抵当権を抹消する必要があります。
そんな抵当権抹消登記にかかる費用は以下の通りです。
・登録免許税:不動産1つにつき1,000円
・司法書士への報酬:5~10万円
所有権移転登記に関する費用はかからない
なお、マンション売却時はマンションの所有権を売主から買主に移転する「所有権移転登記」もあります。
しかし、所有権移転登記に関する費用は買主が支払うので売主は気にしなくて良いです。
この章では、マンション売却時の諸費用について解説しました。
3.不動産会社選びのポイント
マンション売却時に知っておくべきことの3つ目は、不動産会社選びのポイントです。
上述したように、マンション売却時は複数の不動産会社に査定依頼して、その中で仲介を依頼する不動産会社を選定するという流れになります。
しかし、査定「価格」だけに注目すると質の悪い不動産会社に仲介を依頼してしまうリスクがあるのです。
そこでこの章では、不動産会社選びのポイントである以下について解説します。
・査定価格の根拠を見極める
・査定時にヒアリングすべきこと
査定価格の根拠を見極める
不動産会社を見極めるときは、査定「価格」だけでなく査定価格を算出した根拠をヒアリングしましょう。
というのも、不動産会社の中には査定価格をあえて高く提示する不動産会社があるからです。
なぜ高く提示するかというと、「とりあえず媒介契約を結んで、売れなければ価格を下げれば良い」と考えているからです。
だまされないために根拠を大事に!
仲介手数料は成功報酬なので、媒介契約を結ばないことには仲介手数料をもらうチャンスもありません。
そのため、売主のことは一切考えず、とりあえず媒介契約を締結するためだけに、「成約できない高い査定価格」を提示する不動産会社がいるのです。
そのような不動産会社を見極めるためには、査定価格を算出した根拠に注目する必要があります。
査定時にヒアリングすべきこと
査定価格を提示されたら以下をヒアリングしましょう。
・どのような成約事例を元に算出したのか?
・最近同じエリアでマンションを成約させたか?
そもそも、不動産会社が机上査定で算出する査定価格は、「周辺で成約した事例」を参考にしています。
そのため、「参考にした成約事例」をヒアリングすることで、査定価格の確からしさが分かるというわけです。
【選び方】不動産会社選びのポイント
また、その不動産会社が、最近同じエリアでマンションを成約させたのであれば、査定価格が多少高くても納得感があるといえます。
なぜなら、まだそのエリアでマンションを探している顧客を抱えている可能性があるからです。
このように、査定時に上記2点をヒアリングして、査定価格の根拠をヒアリングしましょう。
それが、優良な不動産会社を選定するポイントです。
4.マンションの相場価格を調べる方法
マンション売却時に知っておくべきことの4つ目は、マンションの相場価格を調べる方法です。
具体的には、以下2つのサイトを利用してマンションの相場価格を調べます。
・REINS Market Information
・土地総合情報システム
上述したように、マンションの査定価格は成約事例を基に算出するので、成約事例を調べておくことで相場感を養えます。
優良な不動産会社を選ぶためにやること
どちらのサイトもエリアと物件種類を指定すれば、周辺で成約した事例を簡単に調べることが可能です。
そのため、不動産会社に査定依頼するタイミングで、上記2つのサイトで相場を調べておくと良いでしょう。
そうすることで、査定価格の正確性を確認しやすくなり、優良な不動産会社の選定につながります。
5.マンション売却のタイミング
マンション売却時に知っておくべきことの5つ目は、マンションの売却タイミングです。
マンションの売却タイミングについて以下を解説します。
・今が売り時である理由
・大型連休明けは集客が多い
・税金からみた売り時
今が売り時である理由
マンションは今が売り時といえます。
というのも、東京カンテイのデータによると、中古マンションの価格は以下のように過去10年で最も高い水準だからです。
・2010年:2,965万円
・2011年:2,979万円
・2012年:2,863万円
・2013年:2,791万円
・2014年:2,851万円
・2015年:3,070万円
・2016年:3,476万円
・2017年:3,577万円
・2018年:3,638万円
・2019年:3,709万円
もちろん、今後も価格は上昇する可能性はあります。
しかし、コロナウイルスの影響もあり経済が不透明な状況なので、高く売れる可能性が高い今売った方が無難といえるでしょう。
大型連休明けは集客が多い
また、マンションを売却する「時期」については、大型連休明けは集客が多い傾向にあります。
たとえば、お盆明けや年末の休み明けです。大型連休明けに集客が多い理由は、実家に帰ることで心境の変化があるからです。
たとえば、「親に家の購入をすすめられた」などは、わたしが担当した顧客の中でもマンションを購入する理由に挙げる人はいました。
そのため、もし調整できるならお盆明けや年始など、集客(マンション購入検討者)が多い時期に売り出すと良いでしょう。
税金からみた売り時
マンションを売却するときは売却益に税金がかかります。
しかし、マンションの保有期間が長いほど税率は下がるという仕組みになっているのです。
具体的には、保有期間が5年超・10年超という2つの節目で税率は変わってきます。
そのため、5年・10年の節目付近のマンションを売るのであれば、築年数が5年・10年を超えるまで待った方が良いでしょう。
もちろん、売却時期を調整できれば…という前提です。
6.マンション売却時の税金
マンション売却時に知っておくべきことの6つ目は、マンション売却時の税金です。
マンション売却時の税金については以下を知っておきましょう。
・譲渡所得の計算方法
・譲渡所得税率
・3,000万円の特別控除
譲渡所得の計算方法
譲渡所得とは平たくいうと「マンションの売却益」のことです。
不動産売買時の譲渡所得の計算方法は少々特殊で、以下の計算式で算出します。
譲渡所得=(売却価格-売却時の諸費用)―(購入時の価格+購入時の諸費用-減価償却費用)
特に「減価償却費用」の計算は複雑です。そのため、実際は不動産会社に譲渡所得を代わりに計算してもらうことをおすすめします。
譲渡所得税率
前項の計算式に当てはめて譲渡所得を計算したら、次は以下の税率を掛けて税額を計算します。
税の種類 | 長期保有 | 短期保有 | 10年超保有 |
(5年超) | (5年以下) | ||
所得税 | 15% | 30% | 課税所得6,000万円以下の部分:14.21%
課税所得6,000万円超の部分:20.315% |
復興特別所得税 | 所得税額×2.1% | ||
住民税 | 5% | 9% |
保有期間は、マンションを売却した時点ではなく、その年の1月1日時点の期間なので注意しましょう。
たとえば、2015年5月10日に購入したマンションを2020年6月10日売却するとします。単純に計算すると5年1か月なので5年超です。
しかし、2020年1月1日時点の保有期間でカウントされるので、保有期間は5年以下になります。
3,000万円の特別控除
売却するマンションが以下の条件に当てはまれば、譲渡所得から3,000万円差し引くことができます。
・自宅用のマンションであること
・売却した過去2年に不動産売却に関する特例を受けていないこと
・近親者への売却ではないこと
譲渡所得から3,000万円差し引くことができれば、大半のマンションは譲渡所得ゼロになり非課税となるでしょう。
ただし、あくまで自宅用のマンションなので、投資用マンション売却時は利用できません。
なお、上記の条件は一部なので、詳しくは国税庁ホームページを確認ください。
>>【不動産売却の流れと手続き】失敗しないために査定額や相場、仲介手数料、税金を正しく知ろう
まとめ:相場価格の調査などが肝になる
このように、マンション売却時はマンション売却の流れ・諸費用・不動産会社選び・相場価格の調べ方・税金・売却タイミングの6点を知っておきましょう。
いずれもマンション売却を有利に進めてくれる項目なので、マンション売却前に知っておくことで高く・早く売りやすくなります。
特に不動産会社選びは重要なので、査定価格の根拠を見極めて優良な不動産会社を選定するようにしましょう。
※書き手は、有名メディアで連載を持っている専門家です