こんにちは。宅地建物取引士やマンション管理士、ファイナンシャル・プランナー、管理業務主任者の資格を持つライターです。
この記事では、以下のように思ってる方向けに、賢く家を売却するための重要なポイントを5つに分けて解説します。
・家を売りたいけど、どんな風に売却手続きを進めたらいいかわからない
・戸建てやマンションを上手に買い替えたい
・家を売却しても結局いろんなお金が必要になりそうで踏み切れない
家を売却するには、いろいろな準備や手続きが必要になりますから、本記事を読んで賢く家を売却するための知識を身につけてください。
※自分の家がどんな相場で売れるか、手数料や税金などの諸費用はどれくらい必要かといった、様々な疑問を解決していきます
>>家を売るならどこがいい?ローンが残ってると売れない?マンション売却の失敗例も紹介
この記事の目次
①売却までの流れを理解する
まず、実際に家を売却するまでの流れを、大きく3つに分けて解説します。
家の売却については「すべて不動産仲介会社に任せておけばいい」と考えている人も見かけます。
しかし、売主である自分でも流れや手順を把握し、売却の計画を立てることが賢く家を売却するために重要なポイントの一つとなります。
売却前:情報収集と査定でしっかり売り出し準備
家を売却するにあたって、最初に大事になるのが情報収集です。
・自分の家はどれくらいの相場で売れているのか
・不動産仲介業者に依頼するならどこがいいのか
ということなどは売りに出す前にしっかり調べておきましょう。
インターネットが便利!複数業者に査定依頼も
相場を調べたり、不動産仲介業者に査定を依頼したりする際にはインターネットの利用がおすすめです。
ポータルサイトなどで相場を調べることができますし、一括で複数の業者に査定を依頼できるサービスもあります。
家を売却するとき、売主は自分で好きな売出価格を設定して、自由な条件で自分の家を売ることも可能です。
しかし、専門的な知識がなければ、相場や物件の現状を把握して適切な値段を設定することは難しく、
それだけで家が売れる確率が低くなってしまいます。
加えて家の売却では大きな金額が動きますし、売買契約で取り決めるべき事項もたくさんあるため、
安心して取引できるよう不動産仲介業者に仲介を依頼することが一般的です。
売却活動:上手な価格設定や広告から売買契約の締結
査定や打合せを経て依頼する不動産業者が決まったら、いよいよ家の売却活動に入ります。
「売出価格の設定・広告・内覧・購入希望者との交渉」などが売却活動ですが、まず重要になるのが売出価格の決定です。
広告や内覧などのとき、不動産仲介業者がどのように対応してくれるかもしっかり取り決めておくことが必要です。
交渉時の値下げも想定しておく
また、売出価格の設定では査定額を参考にすることになりますが、売買交渉において値下げされることを想定しておくことがポイントです。
その他、手数料や登記費用などの諸経費を差し引いた額が手取り金額となることにも注意して家の売出金額を決定するようにしましょう。
そして、購入希望者と価格や諸条件のすり合わせが終われば、売買契約を締結します。
売却後:決済や登記を済ませて、翌年の確定申告
売買契約の締結では契約書を交わし、手付金が買主から交付されます。
そして残代金の決済は後日とすることが一般的です。
決済では所有権移転登記などの登記申請に必要な書類の受け渡しが行われ、
この決済時の残代金・各種書類の受け渡しを持って引き渡しとし、一連の売買取引が完了します。
不動産仲介業者の成功報酬である仲介手数料も、この決済時に支払うことが通常です。
家を売却して手に入れた利益は譲渡所得として所得税の対象となるため、住民税と合わせて翌年2月~3月の確定申告が必要となります。
②家の売却に焦りは禁物!期間やタイミングを意識する
家を売りたいと考えた時、すぐに行動に移すということはとても大切です。
とはいえ焦って大きな損をすることのないよう、家を売却するために必要となる期間や、どんなタイミングが良いのか、ということついて解説します。
住み替え時は特にタイミングに注意!引っ越してから売るか、住みながら売るか
今住んでいる家を売って新しい家に住み替えるとき、「引っ越してから売るべきか、住みながら売るべきか」というポイントがあります。
これらは両者ともに一長一短であるため、「できるだけ家の売却と購入を同時に進められるように意識する」ことをおすすめします。
新しい家に引っ越してから売るなら落ち着いて家の売却を進められますが、固定資産税やローンの支払は継続します。
引っ越し費用や賃貸費用がかかる場合も
一方、住みながら家を売る場合には、その代金を新しい家の購入資金にあてられます。
しかし新しい家の購入が進んでいなければ、借家や賃貸マンションなどの仮住まいに引っ越さなければなりません。
そうなると引っ越し費用や初期費用などの負担が発生します。
これらの状態を避けるためには、売買契約の成立から引き渡しまでにできるだけ期間的な余裕を持てるように交渉し、
家を住み替えできるタイミングをうまくうかがうことがポイントになります。
売却にかかる期間は最低でも3カ月
家を売りに出してから売買が成立するまでの期間(売却期間)は、戸建て売却で半年~1年、マンション売却で3か月程度だと言われています。
しかし、これはあくまで目安であるため、マンションを売りたいと考え始めてから半年以上かかることもあります。
家の売却期間を短縮させるには、売出価格を下げることが効果的です。
時間に余裕のある売買計画を練ること
逆にいうと、急いで家を売りたい事情がないならば、売出価格を特別低く設定する必要はありませんし、
価格改定や交渉の際にも慎重に考えて判断することができます。
つまり、家を売却するタイミングを見定め、時間に余裕のある売買計画を練ることが賢く家を売るコツになります。
家を売るのにベストなタイミングはいつなのか
家を売るのにベストなタイミングは、「築10年~20年未満」です。
家の資産価値は新築からすぐに下落していきますが、その後築10年~20年程度までの下落率はゆるやかになります。
経年劣化が進んでいろいろな修繕が必要になる前の、築10年~20年未満がベストなタイミングだと言えます。
3月前後と10月前後も売る時期でおすすめ
また、時節的には新生活が始まる3月前後と、人事異動がある10月前後のタイミングも需要が高まるために狙い目です。
また子供の独立や自分の退職など、ライフイベントの前後で戸建てを手放してマンションに住み替えるという方も多く見かけます。
各種ライフイベントのタイミングを見据えての計画を徐々に立てていくというのも、賢く家を売るためのポイントになります。
急ぎの場合は仲介ではなく買取も視野に入れる
売り出しの手間や売却期間を待つことなく、急いで家を売りたいというときは、業者による「買取」を選択することも一つの手です。
買取はどうしても相場より低い金額で売ることになりますが、業者と売主の間で買取の意志がまとまればすぐに家を売却できます。
仲介手数料が発生しないというメリットもあります。
③不動産仲介会社を妥協せず上手に選ぶ
家を賢く売るためには、不動産仲介会社選びの労力を惜しんではいけません。
自分にとってベストな不動産仲介会社を妥協せずに選ぶことが大切です。
査定はできるだけ複数の不動産仲介会社に依頼する
戸建てやマンションなど、家の査定には各業者が独自に持っているノウハウが大きなポイントとなるため、
複数の業者に査定を依頼することがおすすめです。
たとえばマンションを売りたいときにベストな不動産仲介業者もいれば、あまりマンションの売買を仲介したことがない業者もいます。
対面で信頼できる担当者を見つける
インターネットで複数業者に査定を依頼することも大切ですが、
可能であれば実際に不動産仲介業者に足を運び、担当者としっかりコミュニケーションをとることもおすすめです。
大切な家の売買を任せて取り仕切ってもらうわけですから、信頼できる会社・担当者に仲介を依頼するべきです。
大手と中小、それぞれの強みと弱みを知る
不動産仲介業者にはデベロッパー系などの大手もあれば、地域密着型の中小企業もあります。
それぞれ得意とする物件のタイプやエリアなどがありますので、できるだけ幅広いタイプの不動産仲介業者に相談してみることをおすすめします。
たとえばインターネットなどを使った幅広い広告戦略が得意な大手もあれば、
地域の人脈を活かした集客力で的確に購入希望者を募ることができる中小企業もあります。
自分にとってベストな媒介契約を選ぶ
不動産仲介業者に仲介を依頼する際には、「媒介契約」という契約を締結することになります。
媒介契約には「一般媒介契約」・「専任媒介契約」・「専属専任媒介契約」という3種類があり、
売主である自分の希望するスタイルに適した媒介契約を選びます。
自分の希望と合う売り方を
たとえば、一般媒介契約は複数の不動産仲介業者と締結することができ、幅広い広告などが期待できますが、
その分あまり熱心に動いてもらえない可能性があります。
逆に専任媒介契約や専属専任媒介契約は一社としか結ぶことができないため、責任をもって動いてもらえる確率は高まりますが、
その不動産仲介業者の特性によって家が売れる確率は左右されますし、後述する「囲い込み」のリスクも出てきます。
家の売り出し前に不動産仲介業者との打合せをしっかり行い、信頼できる業者と自分にとってベストな媒介契約を締結しましょう。
④家をできるだけ早く・高く売却するコツを知る
続いて、家をできるだけ早く、そして高く売却するためのコツを解説していきます。
明るく、清潔感を出す
内覧時、乱雑で薄暗い家よりは、明るくて清潔感のある家のほうが売れる確率は高くなります。
できるだけ家をきれいな状態に保ち、心地よく内覧してもらいましょう。
特にトイレやキッチンといった水回りは意識的にきれいにしておきたいですし、家の状態によってはハウスクリーニングのなどの利用も検討しましょう。
インテリアにもこだわる
内覧時には、何もない殺風景な状態の部屋より、
おしゃれなインテリアなどが置いてある方が、購入希望者が新居での新生活をイメージしやすく、印象にも強く残ります。
大きい家具に限らず、間接照明やスポットライトなどを取り入れるだけでもかなり雰囲気が変わります。
ホームステージングを利用する
近年では、売出し中の家に家具を設置して購買意欲を促進する「ホームステージング」という演出方法が注目されています。
家具量販店やホームステージングの専門業者から家具をレンタルできますし、
インターネット上で家具の画像などを合成した部屋を内覧できるバーチャルステージングなどもあります。
内覧や購入の申込への対応は迅速・ていねいに
購入希望者から内覧や購入の申込があったとき、対応が遅れてしまってはせっかくの購入希望者の意欲を削ぐことになります。
迅速かつていねいな対応を心がけましょう。
特に、購入申込書が届いた段階で安心し、反応が遅くなるというのは禁物です。
購入申込の段階では売買契約はまだ成立していませんので、自由に購入を取りやめることができます。
違約金やキャンセル料などのペナルティもありません。
せっかくの購入申込書を無駄にすることのないよう、緊張感を忘れないことが大切です。
内覧の予定が入らないときは?
購入希望者からなかなか内覧の問い合わせが入らないときは、値段や広告に何らかの問題がある可能性が高いと言えます。
不動産仲介業者の売却活動の内容などにも目を向け、よく考えてみましょう。
値段を見直す
相場はもちろん、物件の状況などをふまえながら、適切な値段であるかどうかを見直しましょう。
いくら素敵な家であっても、相場から外れた高値を提示していては、内覧に至らずに検討をあきらめられてしまいます。
広告方法・不動産業者を見直す
家を売る場合、以下のような様々な媒体での広告が可能です。
・チラシのポスティング
・不動産仲介業者の店頭に販売図面(マイソクと呼ばれる場合があります)を貼る
・インターネットの不動産ポータルサイトに掲載する
しかし、広告を行っているのになかなか内覧の予定が入らないのであれば、広告の内容や媒体について見直すことが大切です。
不動産業者の「囲い込み」に注意
自社だけで仲介手数料を全部もらうために、他の不動産仲介業者から物件に関する問い合わせがあっても、
「商談中」などと嘘をついて取り合わないことがあります。
これが囲い込みです。
囲い込みへの対策を知ろう
囲い込みは、家が売れる時期を遅らせる原因となりますし、売主に対する背任行為です。
しかし明確な法律違反ではないため、対策が難しい問題のひとつです。
対策例としては「一般媒介契約で複数の不動産仲介業者に媒介を依頼する」という方法がありますので、
うまく家の売却が進まない場合には検討してみましょう。
⑤家の売却で必要になる費用も意識しておく
最後に、家の売却時に必要になる費用についてみていきます。しっかり内容を把握して、売買計画を立てる際に役立ててください。
リフォーム費用は必須ではない
高い費用をかけてリフォームをすることは必ずしもおすすめできません。
購入希望者が自分の好みに合わせてリフォームしたい場合には、事前に自己負担で済ませたリフォームが無駄になってしまいます。
※リフォーム費用は経費として譲渡所得から差し引けるため、所得税の節税にはつながります。
売却時の仲介手数料
家を売却するときの仲介手数料は、売買代金によって段階的に法律で定められています。
具体的な金額の計算は、以下のような速算式を用います。
売買代金 | 仲介手数料の計算式(税別) |
400万円以上 | 売買金額×3%+6万円 |
200万円超~400万円以下 | 売買金額×4%+2万円 |
200万円以下 | 売買金額×5% |
この金額はあくまで上限額で、この範囲で仲介手数料を定めることになっています。
とはいえ、仲介手数料には不動産仲介業者が負担する広告費や人件費などの諸経費が含まれているため、
この上限額から値引きを求めても応じられないケースがあります。
※新聞折り込みのように、通常の広告費を超えるような方法での広告を希望する場合は、不動産業者と売主の合意のもと、売主の費用負担で広告する場合があります。
登記申請費用やローン関連費用
家を売却するとき、所有権移転登記を申請することで、買主に所有権が移ったことを明示します。
この所有権移転登記の費用は、買主が負担することが一般的です。
しかし、売主が家を相続して相続登記を済ませていなかった場合などには、
売主の責任として、それらの登記を売主の費用負担で申請することが慣例となっています。
登記費用「登録免許税と司法書士への報酬」
登記費用は申請する登記の種類や内容によって変わりますが、登録免許税と司法書士への報酬が必要になります。
例えば相続登記を売主が負担するならば、
「固定資産税評価額×0.4%」の登録免許税と、6万円~10万円程度の司法書士への報酬を支払うことになります。
登記申請には司法書士が必須というわけではありませんが、様々な調査や法的手続きが必要になるため、司法書士に依頼することが一般的です。
家の売却や買い替えでかかるコスト
その他、売主が家の売却や買い替えで支払うことになる可能性がある費用として、以下のものがあります。
・住宅ローン抵当権が残っていれば、抵当権抹消登記申請費用
・買い替えで新たにローンを借りる場合には抵当権設定登記申請費用
・売却代金でのローン一括返済に対する金融機関への事務手数料
短期・長期の譲渡所得
家を売って利益を得た場合、所得税が課税されることになります。
ここでポイントになるのが、家の所有期間が5年未満で「短期譲渡所得」となるか、5年以上で「長期譲渡所得」かどうかという点です。
所得税の税率が家の所有期間によって変わるのですが、具体的には
・短期譲渡所得:30%
・長期譲渡所得:15%
と、その差は約2倍にものぼります。
他にも、住民税や復興所得税などの税金が発生するため、家を売るときの税金には注意が必要です。
家を満足して売るための知識まとめ
以下、要点のまとめです。
・家を売却するまでの流れや必要になるお金をしっかり理解する
・焦らず、できるだけ余裕を持って家を売る計画を立てる
・信頼できる不動産仲介業者を妥協せずに探す
・家の清掃や、購入希望者への対応も大事なコツ
これらの知識があやふやなままでは、いつまでも家が売れないとか、予想外の費用負担が発生して住み替えの計画が狂ってしまうことも考えられます。
まずは今回の記事で解説してきた重要なポイントをしっかりと押さえることが、賢く家を売却するための近道となります。