今回も、長期的な視点で資産を築くために知っておきたい積み立て投資のお話を。前回までは、積み立て投資が安心できて素晴らしい投資法だと書いてきました。
しかし、積み立て投資は万能ではないのです。なぜ、万能ではないのか、事例とともに説明していきます。
参考書:『積立投資のすべて ──誰にでも始めやすい富裕の王道を徹底研究』
商品がずっと値上がりしてると利益が出にくい
以下の事例をご覧ください。
答えは、②です。以下は、1年ごとの購入できた口数を示しています。
前回まで述べてきたように、積み立て投資の場合、最終的な利益は「商品の購入口数 × 商品の価格」で決まります。価格が購入時から上がっていけば、それだけ購入できる口数も減ってしまいます。
ですから、最終的に商品価格が上がったとしても、利益は前回の事例よりも少なくなってしまうんです。そして、結果論ですが、このケースでは一括投資による利益のほうが圧倒的に大きいです。
結論からいうと、積立投資は相場が右肩上がりの場合でも利益を出せるものの、一括投資に比べると少なく、投資効率は低くなる。このケースの場合、一括投資では2倍(プラス100%)に対して、積立投資の利益は39%である。
一括投資の場合、最も価格が低い時点(つまり投資開始時点)でまとめ買いをするので、結果的に積立投資よりも大量の口数を買い込める。右肩上がりの商品については、積立投資も一括投資も、投資終了時の価格は同じでも、それまでに買い込んでいる口数が違うのだ。
積立投資を始めた直後は、むしろ相場はとことん下げてくれたほうがありがたい。それだけ大量の口数を買い込むことができるし、回復の余地があるからだ。
しかし、このように右肩上がりで上昇していく商品に積立投資をしていく場合、一括投資に比べると効率が低いといえる。
単純に右肩上がりで上昇する金融商品の場合、投資効率でいえば最も良いのは一括投資である。しかし、次に良いのが積立投資であり、最も悪いのがゼロ金利に積み立てることなのだ。
ですから、積み立て投資の場合、商品価格が最終的に購入時より上がったとしても、喜べるわけではないのです。ただし、積み立て投資には、価格が下がっても最終的に利益が出る場合もあります。
10年で価格が100倍になる奇跡のような金融商品があったとしても、積立投資では、5倍程度の評価額にしかならない。がっかりした人もいるだろう。
積立投資家は、積み立てている金融商品の価格が上がったら儲かり、下がったら損をするという考え方を捨て去ってほしい。上がっても“損”をすることもあれば、下がっても儲かることもあるのだ。
むしろ、こう考えれば、短期的に値上がりする金融商品を探そうと思わずに済む。従来の「安く買って高く売る」という「価格偏重」思考から、「口数をうまく貯め込む」という「口数重視」思考への切り替えが必要だ。
ですので、積み立て投資を行う際は、価格の変動ではなく「購入できる口数」に着目すると、安心して資産運用ができるんです。では、最後に価格が上がっても利益が出にく事例をもう1つ紹介して終わりにしたいと思います。
価格が上がった後に下がると利益はもっと出にくくなる
以下は、価格が右肩上がりで上昇していって、最後に値下がりした例です。
この時の答えは②になります。以下は、1年ごとに増えていった購入口数です。
今回、赤字にはなりませんでした。しかし、初めと終わりの商品価格を比べて、1.5倍に上昇していたとしても、利益は5万円しか出ていません。
この原因も上記と同じで、購入口数を増やせなかったからですね。
このように、積立投資は上昇後に下落すると評価が下がりやすい。その理由は先ほどの式で考えればすぐに分かる。上昇すると、買える口数が減っていき、その少ない口数を評価する価格が下がるからだ。
このように、積み立て投資は価格に一喜一憂しなくて済みますが、商品価格が最終的に上がったとしても、一括投資ほど利益を上げられません。
こうしたことを知っておくと、いろんなケースに対応できますので、覚えておきましょう。
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